CB750Fに特化したプロフェッショナル・ピット
『CB Garage』

伝説のマシンが教えてくれた、
本当の”バイクの楽しさ”

Honda CB750F- 欧州を制圧した伝説のストリームライン

「便利さ」と引き換えに、私たちは何を失ってしまったのか?

1998年の創業以来、旧車と向き合い続けてきたバイク屋オーナーが語る、
CB750Fという名車の真実と、それを選ぶべき理由。

 

その「違和感」の正体


コーナーの手前でブレーキを握り込む。車体はこれ以上ないほど安定し、クリッピングポイントへと吸い込まれていく。スロットルをガバっと開ける。リアタイヤが一瞬滑る気配を見せるが、即座にインジケーターが激しく点滅し、何事もなかったかのように車体は前方へと弾き出される。

速い。とてつもなく、速い。

最新の200馬力を超えるスーパースポーツ。6軸IMU、トラクションコントロール、ウィリーコントロール、コーナリングABS。まるで空の上の戦闘機のような電子制御が、私の未熟な操作を完璧に「修正」してくれる。

ヘルメットの中で、私は自分自身に問いかけました。

「今、俺は本当にバイクを操っているのか?」

この文章を読んでいるあなたも、もしかしたら同じような感覚を抱いているのではないでしょうか。週末のツーリング、仲間と並べた最新鋭のマシン。SNSにアップすれば、たくさんの「いいね」がつきます。「カッコいいですね」「最新モデル羨ましいです」。

でも、帰宅してガレージにバイクをしまった後、手に残る感触がひどく希薄なことに気づくのです。まるで、極めて精巧なシミュレーターに乗っていたかのような、現実感のなさ。

これは、そんな「現代のバイク病」とも言える虚無感に苛まれているあなたへ、1998年からバイク屋を営み、延べ数百台の旧車を整備・販売してきた私が、なぜ今CB750Fを強く推薦するのか。その理由をお話しします。

 

失われた「対話」を求めて


誤解しないでいただきたいのは、私は現代の技術を否定しているわけではないということです。安全性は飛躍的に向上し、誰でも高性能なパワーを扱えるようになりました。それは素晴らしい進歩です。

しかし、私たち30代、40代、50代、60代のライダーが、若き日に憧れ、熱狂した「バイク」という乗り物は、もっとこう、泥臭くて、熱くて、対話が必要な相手ではなかったでしょうか。

「乗せられている」という感覚

E-Clutchやクイックシフターのおかげで、クラッチレバーを握る回数は激減しました。ブリッピングの技術も不要です。アクセルを適当に開けても、コンピューターが最適な燃料噴射を行い、タイヤがグリップを失わないよう監視してくれます。

それはまるで、過保護な親に手を引かれている子供のような気分でした。「おっと、危ないよ」「こっちだよ」と、バイクが先回りして私のミスを帳消しにする。

「俺の腕が上がったわけじゃない。バイクが優秀なだけだ」

その事実に気づいたとき、急激に熱が冷めていくのを感じました。バイクとの「対話」が成立していないのです。一方的に指示され、それに従っているだけ。そこには、ヒリヒリするような緊張感も、心を通わせる喜びもありませんでした。

本当は何かが違う。もっと、鉄と油の匂いがする、心臓の鼓動が直に伝わってくるような体験がしたい。最新モデルに乗ると、いつもそう思っていました。

あなたも、心のどこかで感じていませんか?カタログスペックの数字や、電子デバイスのモード数自慢ではなく、もっと根源的な「操る喜び」への渇望を。

 

伝説の深層──なぜCB750Fなのか


欧州からの「全否定」と、起死回生の「F」

時計の針を1970年代後半に戻しましょう。当時、ホンダは世界初の量産4気筒バイクCB750FOURで世界を席巻していましたが、その後発ライバルたち(特にカワサキZ1)の猛追を受けていました。

1978年、満を持して投入したDOHCエンジンの新型「CB750K」。ホンダの自信作でした。しかし、欧州のディーラー向け内覧会で突きつけられたのは、衝撃的な「全否定」だったのです。

「こんなアップハンドルの殿様乗りスタイルは、今のヨーロッパでは売れない」

当時、欧州ではカフェレーサーブームが到来していました。低く構えたハンドル、スポーティな外観が求められていたのです。

そこでホンダ開発陣は、急遽、欧州の要望に応えるスポーツモデルの開発に着手します。既存のKのエンジン・車体をベースにしながら、タンクからサイドカバー、テールカウルまでが一体となった流麗なデザインを与え、セパレートハンドルやバックステップ気味のポジションを採用。

そうして生まれたのが、この「CB750F」シリーズです。

開発コードネーム「ノルマンディ上陸作戦」

このプロジェクトには、ヨーロッパ市場を制圧するという強い意志を込めて、「ノルマンディ上陸作戦」というコードネームが与えられていたと言われています。

エンジンには、当時無敵を誇った耐久レーサー「RCB」の技術がフィードバックされました。空冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒。レッドゾーンまで突き抜けるような高回転の伸びと、耐久レースで培われた信頼性。

結果は、歴史が証明しています。1979年の発売と同時に世界中で爆発的なヒットを記録。日本国内でも、わずか4年間の生産期間中に3年連続でトップセールス(ナナハンクラス)を記録するという、伝説的な金字塔を打ち立てたのです。

CB750F DOHC4バルブエンジン

RCBの血統を受け継ぐDOHC4バルブエンジン。造形美と機能美が同居する

 

2026年の今、選ぶべき理由

時は流れて2026年。今、バイク業界は空前の「ネオレトロブーム」です。

カワサキのZ900RS、ヤマハのXSRシリーズ、そしてホンダ自身のCBシリーズ。最新の技術で昔のデザインを再現したバイクが飛ぶように売れています。それらは確かに素晴らしいバイクです。壊れないし、速いし、快適です。

しかし、「ネオ(新しい)」ではなく、「オリジナル(本物)」にしかない味があります。

今のバイクは、インジェクション(燃料噴射)です。どんな気候でもボタン一つでエンジンがかかります。対してCB750Fはキャブレター。その日の気温や湿度に合わせてチョークを引き、スロットルを微調整してエンジンを目覚めさせる儀式が必要です。

面倒くさい? いいえ、それが「愛着」なのです。

中古市場を見ても、CB750Fは今が狙い目です。2026年2月現在、中古車平均価格は約167万円前後。もちろん安くはありませんが、新車のリッターバイクを買うのと変わらない、あるいはそれ以下の価格で、歴史的遺産とも言える名車を手に入れることができるのです。

 

HONDA CB750FB (1981) SpecEngine:空冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
Displacement:748 cc
Max Power:70 PS / 9,000 rpm
Max Torque:6.0 kg-m / 7,000 rpm
Dry Weight:227 kg
Brake: (F)ダブルディスク(デュアルピストンキャリパー)
Wheel:裏コムスターホイール

 

「バン、バン」と踊るタコメーター

私が特に気に入っているのが、エンジンのレスポンスです。アクセルを煽ると、タコメーターの針が「バン、バン!」と瞬時に跳ね上がります。重厚なフライホイールマスを感じさせつつも、鋭い吹け上がり。

70馬力というパワーも絶妙です。現代の200馬力は、サーキットでプロが乗らない限り、その性能の半分も引き出せません。しかし、70馬力なら、公道でも「使い切る」感覚を味わえます。

回して走る楽しさ。9000回転まで引っ張った時の、集合管からの突き抜けるようなサウンド。それはドーパミンが脳内に溢れ出す瞬間です。
 

人生を変えた「鉄馬」との日々


「操る」というスキルの向上

このバイクは、ごまかしが効きません。ラフなアクセルワークをすればギクシャクするし、ブレーキングをサボれば曲がりません。ABSもありませんから、タイヤの限界を自分の肌で感じる必要があります。

乗るたびに自分がバイクと一体になっていくのを感じます。「今日はちょっと機嫌が悪いな」「お、今は凄く綺麗に曲がれた」。バイクが常に私に語りかけてくるのです。

「もっと丁寧に」「そう、そのタイミングだ」

調子に乗れば警告を与えてくれ、上手く乗れれば最高の快感で応えてくれる。厳しくも優しい師匠のような存在。気づけば、私のライディングスキルは、電子制御に頼っていた頃よりも格段に向上していました。

カスタムとメンテナンスの喜び

CB750Fの魅力は、その拡張性にもあります。40年前のバイクですが、人気車種ゆえにカスタムパーツは豊富です。

私はマフラーを当時物のヨシムラサイクロンに変更しました。その音は、まさに70-80年代のレースシーンそのもの。ホイールを17インチに変えたり、足回りを現代のパーツでリフレッシュしたりと、自分だけの一台に仕上げていく過程もたまりません。

休日の朝、コーヒーを飲みながら愛車を磨く時間。プラグの焼け具合をチェックする時間。それは、ただ消費するだけの現代生活では得られない、充実した「生産的」な時間です。

CB750F カスタム

自分好みに仕上げる喜び。現代車にはない、機械いじりの醍醐味がここにある

 

あなたへのメッセージ


ここまで読んでくれたあなたに、私は心から伝えたいことがあります。

もしあなたが、今のバイクライフに少しでも「退屈」や「虚しさ」を感じているなら、一度でいいから、この時代のバイクに触れてみてほしいのです。

CB750Fでなくても構いません。Zでも、カタナでも。でも、CB750Fシリーズは、その中でも特別なバランスを持っています。スパルタンすぎず、ダルすぎず。日本の道路事情にマッチしたサイズ感とパワー。そして何より、あの「バリバリ伝説」の主人公が駆ったマシンとしての物語性。

40年前の衝撃は、決して色褪せていません。それどころか、デジタル化が進んだ現代だからこそ、そのアナログな鼓動は、より鮮烈に、より感動的に、私たちの五感を刺激します。

中古車サイトを開いてみてください。「CB750F」と検索してみてください。

そこには、あなたの人生を変えるかもしれない一台が待っています。

不便かもしれません。手がかかるかもしれません。夏場は熱いし、振動で手も痺れるかもしれません。

でも、その不便さの向こう側にこそ、あなたが探し求めていた「本当の自由」「本当の楽しさ」があることを、私が保証します。

人生に、CB750Fという選択肢を。

40年の時を超え、欧州を制圧した伝説が、
今、あなたのガレージに収まる日を待っています。

※2026年現在、良質な個体は年々減少しています。決断は、お早めに。